The 13th concert


日時 2008年9月19日(金)19時開演
場所 本郷中央教会
入場料 2500円
音楽監督 佐藤宏充
指揮 鈴木恵里奈
出演 滋田聖美
秋田薫 生駒圭子 大森寿枝 高橋知子 辻山洋美 山川一江 山口克枝
井東譲 辻端幹彦 新見準平 朝來泰生
アンサンブル・アマデウス
大熊敏子(Pf) 太田恭子(Pf)  関口将史(Vc)
プログラム Sancta Maria Mater Dei(KV273)
秋田薫 生駒圭子 大森寿枝 高橋知子 辻山洋美 山川一江 山口克枝
井東譲 辻端幹彦 新見準平 朝來泰生  アンサンブル・アマデウス
太田恭子(Pf) 関口将史(Vc)

「Lieben Sie Mozart?」 Lieder Zeit(歌曲の時間)
滋田聖美 大熊敏子(Pf) 関口将史(Vc)
・クローエに (KV524)  ・ルイーゼが不実の恋人の手紙を焼いたとき (KV520)
・すみれ (KV476)  ・魔法使い (KV472)

荘厳ミサ(KV337)
秋田薫 生駒圭子 大森寿枝 高橋知子 辻山洋美 山川一江 山口克枝
井東譲 辻端幹彦 新見準平 朝來泰生  アンサンブル・アマデウス
太田恭子(Pf) 関口将史(Vc)

「Lieben Sie Mozart?」Opern Zeit (オペラの時間)
滋田聖美 大熊敏子(Pf) 関口将史(Vc)
・「羊飼いの王様」より  エリーザのアリア“ひどい人!”
・「アポロとヒアチントゥス」より  アポロとメリアの二重唱
アポロ:山川一江  メリア:滋田聖美
・「コンサートアリア」より  “いえ、いえ、あなたにはご無理です”
・「ティトの慈悲」より セルヴィーリアとアンニオの二重唱
セルヴィーリア:滋田聖美 アンニオ:山口克枝
・「後宮からの逃走」より  コンスタンツェのアリア“どんな拷問が待っていようと”

プログラムの内容

・Sancta Maria Mater Dei
Sancta Maria, mater Dei, ego omnia tibi debeo,
sed ab hac hora singulariter me tuis servitiis devoveo,
te patronam, te sospitatricem eligo.
Tuus honor et cultus aeternum mihi cordi fuerit,
quem ego nunquam deseram neque ab aliis mihi subditis
verbo factoque violari patiar.
 聖母マリアよ、みもとにひれふす私の生ある限りは後楯となり
 死に臨んでは護り庇ってください。

1777年9月9日 ザルツブルクにて。「アヴェ・ヴェルム・コルプスに匹敵する」と言われるほど、魅力ある作品である。マンハイム・パリへの大旅行を前にした個人的な祈願のために作曲された。モーツァルトは病気の父を残し、母アンナ・マリアと共にザルツブルクを出発する。簡潔にして深遠な響きは、21歳の若者の「未来への希望」と「家族への想い」に満ちている。しかし、彼は知っていたのだろうか?この旅が青春の幸福が過ぎ去り、人生の幻滅のはじまりである事を・・・。よく知られているようにアンナ・マリアはパリで客死する事になり、ザルツブルクには帰らない。父レオポルトにとって、妻と最後の別れとなるのである。

「Lieben Sie Mozart?」  Lieder Zeit(歌曲の時間)
・クローエに
ヨハン・ゲオルク・ヤコービ(1740-1814)作の詩は激しい恋情を歌ったもので、同じ日(1787年6月24日)に作曲された「夕べの思い」KV523とは対照的な内容をもっています。13節からなる原詩のうち、モーツァルトは最初の4節だけを使用しています。1789年に出版され、すぐ人々に愛唱されました。

・ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時
1787年5月26日作曲され、詩は女流詩人のガブリエーレ・フォン・バウムベルク(1766-1839)の作。不実な恋人とはアントン・ベルンハルト・エバールという実在の人物で、彼女の実際の体験がこの歌のもとになっています。手紙の燃える炎と内面の荒れ狂う炎とがピアノの細かい分散和音に交錯し高潮した歌が歌われますが、未練を絶ち切れず、愛情の炎が胸に燃え続けているのをはっと感じているのがうかがえます。

・すみれ
1785年6月8日作曲。しかし 原詩は、ゲーテ(1749-1832)のジングシュピール「エルヴィーンとエルミーレ」(1773年か1774年作)に出てくるバラードで、モーツァルトはある詩集のなかにこの「すみれ」を発見し、ゲーテの作品とは知らずに作曲しました。結果的に、モーツァルトの歌曲作品で唯一ゲーテの詩に作曲されたものとなりました。当時は有節歌曲(1番、2番、3番と同じメロディーが繰り返される形)が一般的でしたが、物語の展開に応じて音楽描写を変えていく、シューベルト以降に展開されるロマン派リートへの展望を開いた作品と言われています。最後の2行「あわれなすみれよ 愛らしいすみれだった」はモーツァルトが書き足したものです。

・魔法使い
1785年5月7日作曲。この日にはこの曲の他にK473「満足」とK474「偽りの世」の、3つの前奏と後奏をもつ有節形式の小品が作曲されました。詩は全てクリスティアン・フェリックス・ヴァイセ(1726-1804)によるものです。初めて男に言い寄られたときの娘心の高ぶりを興奮した口ぶりで他の娘たちに伝えるもので、彼を魔法使い扱いする大げさな誇張が、そのうぶな娘の心理状態を劇的に表現し、短い前奏と後奏が効果的です。

・荘厳ミサ
1780年3月ザルツブルクにて。マンハイム・パリ旅行における職探しの失敗と、母との死別。この経験によりモーツァルトは人間性を深め、ザルツブルクに帰った1779年から80年にかけて、素晴らしい作品を数多く生み出したのである。荘厳ミサK337は、モーツァルトが完成させた最後のミサ曲であり、またザルツブルクの大聖堂で演奏されたモーツァルト最後のミサ曲である。
この曲を「荘厳ミサ」に位置づけたのはケッヘルで、様式ではなく、雰囲気で命名したようである。コローレド大司教の要請により時間的に切り詰められているものの、多彩な要素に満ち溢れ、大ミサに劣らない風格をもつ。特に注目すべきは、ベネディクトゥス。フーガで作られているのは大変めずらしい。全体的にはリートの様な美しい旋律の多いミサの中にあって、最も注目をひき、最も革新的である。また、ソプラノ・ソロによるアニュス・デイは「フィガロ」第2幕で伯爵夫人が歌う「愛の神よ、御手を」を思わせ、音楽で「祈り」を表現した比類のない作品とも言われている。

Lieben Sie Mozart?」 Opern Zeit(オペラの時間)
・「羊飼いの王様」より エリーザのアリア“ひどい人!” 
モーツァルトが19歳のときの劇的セレナータ。マリー・アントワネットの弟マキシミリアン・フランツのザルツブルク訪問のために作ったオペラで、宮廷で演奏会形式で上演されましたが、生前に再演された記録はありません。アレクサンダー大王がギリシャのシドンという町を征服した時の話。 高貴な生まれなのに、ある経緯で羊飼いをしていたアミンタはシドンの王となりました。アミンタに会いに来た恋人のエリーザをアレクサンダー王の従者で元シドンの貴族のアジェノーレが遮るので、「ひどい人、いとしい人から私をひき離そうというのね、あなたには心を魂もないのね」とエリーザがアジェノーレをなじるアリアです。

・「アポロとヒアチントゥス」より アポロとメリアの二重唱 
モーツァルトの父レオポルドと親交のあったザルツブルク大学のギムナジウム(大学の付属学校)の教授が教育活動の一環として、学生によるオペラ上演にあたりギリシア神話をもとに台本を書き、当時11歳のモーツァルトに作曲を依頼しました。モーツァルトの少年期における初の本格的なオペラです。

・「コンサートアリア」より “いえ、いえ、あなたにはご無理です” 
  パスクワーレ・アンフォッシ(1727〜1797)作曲の歌劇「軽はずみな変わり者」のソプラノ用代替えアリアの1つ(もう1曲はKV418)。 このオペラは1783年6月30日にウィーンのブルク劇場で上演され、ヒロイン・クロリンダの役をアロイジア・ランゲが歌い、このアリアはアンコールされました。歌の内容は、クロリンダが彼女の愛の誠を謀略で試そうとした猜疑心の強い恋人に対して怒りをぶつけるもの。大きな跳躍、装飾的パッセージやトリルの多用などにより、アロイジアの歌唱技術が最大限に発揮される様に書かれています。

・「皇帝ティトの慈悲」より セルヴィーリアとアンニオの二重唱 
1791年ボヘミア王レオポルト二世の戴冠式の際に上演する目的で1ヶ月前に注文され、18日間で作曲したオペラ。すでにモーツァルトは体調がすぐれず弟子のジュスマイヤーの手により書かれた部分もあると言われています。

・「後宮からの逃走」より コンスタンツェのアリア“どんな拷問が待っていようと” 
1781年、モーツァルトがウィーンに移ってすぐに取りかかることになったのが「後宮からの逃走」でした。新しい環境のなかで、希望と意欲にあふれた喜ばしい気分が反映した明るく楽しいこのオペラは1782年に完成しました。海賊にとらえられ、太守セリムの宮殿にとらわれている恋人コンスタンツェをベルモンテが救出するという話です。2幕で太守セリムの脅迫を交えた求愛に、「どんな拷問が待っていようと私はおそれない」と毅然として死をもっても貞操を守る決意を歌うドラマティックなアリアですが、直前にも長いアリアを歌い、わずかな台詞を挟んで同じ位の長さのアリアが続くため、歌手にとっても「拷問」の様なアリアです。
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