The 14th concert


日時 2009年2月13日(金)18時45分開演
場所 同仁キリスト教会
入場料 2500円
指揮 佐藤 宏充
台本・演出 森山 太
プログラム Missa brevis in C (シュパウル・ミサ)KV258
“魔笛(抜粋)” KV620〈太陽編〉
出演 Missa brevis in C (シュパウル・ミサ)KV258
秋田薫、生駒圭子、小田麻子、高橋知子、辻山洋美 山川一江、大森寿枝
井東譲 丘山哲哉 川野浩史 辻端幹彦 生駒文昭 中瀬日佐男 渡辺智也
アンサンブル・アマデウス
太田恭子(Pf)

“魔笛(抜粋)”〈太陽編〉
ザラストロ/中瀬日佐男
タミーノ/辻端幹彦  パミーナ/高橋知子
弁者/渡辺智也 僧侶/井東譲 モノスタトス/丘山哲哉
童子1/秋田 薫 童子2/辻山洋美 童子3/山川一江
人々/東京モーツァルト連 アンサンブル・アマデウス 
男声合唱/コーロ・マスキーレ・あさお 男声合唱団ピエロ
大熊敏子(pf)

プログラムの内容

Missa brevis in C (シュパウル・ミサ)KV258
《Kyrie》憐れみの賛歌
《Gloria》栄光の賛歌
《Credo》信仰
《Sanctus》聖なるかな
《Benedictus》誉むべきかな
《Agnus Dei》神の子羊
作曲年には諸説あるが、現在は“1776年12月”が有力である。
このミサは後にザルツブルク大聖堂の主任司祭となるシュパウル伯爵のために作曲されたといわれているが、実はこれも諸説あり、定かではない。20歳前後となり宗教作曲家として、豊富な経験をつんだモーツァルトは、クレドミサ(k257)同様様々な試みをほどこし、この小さなミサを魅力的に仕上げた。全体的には、全て同じ調・ハ長調で作曲されている。
各章とも同じ和音ではじまっているが、決して退屈な印象にならず、変化に富んでいる。
モーツァルトが得意とする“輝かしい転調”が繰り広げられ、その大きな担い手である伴奏楽器が、率先して声楽パートを導いていたり、またある時はすっかり裏方にまわり、ハーモニーをそっと支えていたりする。
声楽パートに注目しても、ソロと合唱とのキャッチボールを軽快に繰り広げるかと思えば、各パートがそれぞれ主題となるメロディーを奏で合うこともある。大変印象的なのはベネディクトゥス。リート風の美しい旋律で作曲される事の多いこのテキスト。しかし、ホサンナの雰囲気を受け継いだままキッパリとした速さを保っている。“変化”の得意なモーツァルトであるが、“変化をつけない”事で、作品の印象を奥深くしている点が、興味深い。
そして、もうひとつ印象的なのが、ラスト。
アニュウス・デイはゆったりと荘厳に、ドーナ・ノービスは軽快に・・・・という形が、通常であるが、このアニュス・デイははじめから明るい。そして、テンポに変化をつけることなくドーナ・ノービスに入る。そして、終わり近くになると、7小節にわたり《ファラド》の和音が続き、「このまま、ヘ長調で終わるのかな?」と思わせた頃、突然、《ドミソ》の和音・・・つまり強引に、ハ長調で終わらせている。
大きな、大きな“アーメン終止”である。
はじめて、この曲を演奏したときは、「やられた〜」と、脱帽だった。
私たちは、この愛らしいミサに出会い、この『天才作曲家』の事が、また少し、好きになってしまった。
(大森寿枝)

“魔笛(抜粋)”〈太陽編〉
人の心が荒んできた、架空の時、場所。無意識から生まれるその人の心がもたらす様々な悪しきことは世界を覆いつくし、やがて世を滅ぼそうとしていた。
それを危惧する人々が、いかなる方法が良いものかと知恵を絞り合っていると、ザラストロがある事実を持って現れる。それは、この世界に光を導く資格を持ち、救うことができるかもしれない、タミーノという若者の出現だった。
人々は、ザラストロと共に、その若者を支持することを決める。
そこに、モノスタトスを従えたパミーナが、ザラストロの前に現れる。
彼女はザラストロによって母親から隔離されているのだが、それは、魔法の銀の鈴という不相応な力を手に入れたことによって心が歪んでしまった彼女の母親から悪い影響を受けないようにするという意味があった。
そしてパミーナもまたタミーノと同様、光を導く資格を兼ね備えていた。
タミーノは、パミーナをザラストロに奪われたと誤解させられ、パミーナを救うべくザラストロの許を目指していた。そこに、三人の童子が現れ、タミーノに魔法の笛を授け、然るべき道を教示すると、姿を消す。
タミーノの辿り着いたその場所には三つの進むべき道があった。タミーノはその一つずつを進み行こうとするが、一つ目、二つ目共に、「Zurück!(下がれ!)」という声に遮られる。そして、三つ目の道へと進みかけた時、ザラストロの忠臣でもある弁者が姿を現す。 弁者は、タミーノがパミーナの件やザラストロのことについて大きな思い違いをしていることを知り、今はまだ全てを語ることはできないが試練を乗り越えれば必ず道は開けると諭す。

一方で欲望を曝け出したモノスタトスがパミーナに迫っていた。それを知るザラストロは、己こそが優れていると思う心が世を滅ぼすのだ、と悲しく呟く。
すぐに童子達に救い出されたパミーナは、ザラストロの前で許しを請う。
そこに、不運にもモノスタトスに拘束されたタミーノが場に現れる。タミーノとパミーナは互いにすぐにそれと判り、確認するように熱く抱き合う。
しかしモノスタトスが二人を裂き、ザラストロに進言すると、全てを知るザラストロは「褒美として77回の鞭打ちを」と公正な裁きを下し、タミーノに試練を受けるよう勧める。真実を感じ取ったタミーノは、試練を乗り越えるべく心を決めると、弁者と僧侶によって第一の試練が宣誓される。
一方パミーナは、どうか一目母に会いたいとザラストロに懇願するが、ザラストロは、事の真意を全て話して聞かせ、タミーノと共に、愛と平和が満ち溢れる安らぎの世界を創って欲しいと話す。
そこに、第一の試練を乗り越えたタミーノが戻ってくる。そして、これが今生の別れになるかもしれないと告白する。
パミーナは苦悩に満ち、遂には自らの死を選ぶが、童子達の「彼はまだあなたのことを愛していますよ」という言葉に救われ、タミーノと共に生きていくことを心に決める。

そして、最後の試練に向かうタミーノの耳にパミーナの声が響く。 再会を許された二人は、共に試練に向かうことを決め、自らの心と真摯に向かい合うべく最後の試練へと挑んでいく。
(森山太)

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